あたためる期間があってもいい。

チエミさんは病気のため、
3年前に目がまったく見えなくなってしまいました。

65歳になったチエミさんの最近の口ぐせは、
「私って、なんてしあわせなんだろう」です。


チエミさんは、同じ視覚障害の人たちの集まりに
ヘルパーさんと出かけていって、
カラオケを楽しんだりしています。

「美空ひばり」の歌を、熱唱するそうです。


週に1回通う福祉施設では、
簡単な編み物にチャレンジしています。

どういうものを作ろうか、と考えるだけでも
「ワクワクする」と言います。

とにかく、何でもかんでも楽しんでしまっています。


今では、明るく前向きに生きているチエミさんでも、
実はここまで来るまでには、壮絶なストーリーがありました。


福祉施設に相談する前は、本気で死のうと思ったこともありました。
家の中で首をつる場所はないかと、
ヒモを持ってうろうろしていたところを、
娘さんに発見されたそうです。


はじめて福祉施設を訪れたときは、
いきなり集団の中に入ることは
とてもできる心の状態ではありませんでした。

ますは、同じ目の不自由なスタッフの
シラトリさんのカウンセリングを受けるところからスタートしました。


はじめて白い杖を使ってひとりで歩いたときは、
たった3メートルを歩くのに、足がすくみました。

ものすごい力で杖を握りしめていたので、
次の日は筋肉痛で腕が動きませんでした。

チエミさんがひとりでしゃべって終わってしまう
日もよくありました。

同じ話を何度もしました。



このような1対1のやりとりが1年続いたのですが、
なかなか変化はありませんでした。

前には進みませんでした。


スタッフのシラトリさんは、
「このままでいいのか?」
「ずっと2人きりで過ごしていてもいいのか?」
「私は何もできていないのではないか?」

と悩んでいました。


でも、チエミさんは、

「シラトリさんがいなかったら、
 私は今ここにいない。
 生きていなかった


と振り返ります。

シラトリさんとの2人きりの時間は、
チエミさんが一歩踏み出すための、
とても重要な「足踏み」だったようです。



先日、チエミさんは施設内の喫茶室で、
耳の不自由な方と紅茶を飲んだと、うれしそうに話していました。

コミュニケーションは、相手の手のひらに指で文字を書くという方法で行いました。
チエミさんはそんな体験ができたことに感動し、
「ヘレンケラーのサリバン先生みたいでしょ?」
といって子どものようにはじけていました。

相手が「男性だったこと」「手を握っちゃったこと」を話す姿は、
完全に乙女になっていました。


そして、
「私って、なんてしあわせなんだろう」
とチエミさん。

「死ななくてよかったですね」
と思わず言ってしまった私。


「そうね・・・。あっ、そうそう、この前ね・・・・・・」
とチエミさん、あっさりと次の話題へ。

過去を振り返り、「チエミさんも変わったなぁ」なんてジーンとしている私は、
完全にチエミさんに置いていかれていました。


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● 作業療法士【支援セラピー】
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大空を飛ぶ鳥は、最初から飛べたわけではありません。
誰だって、卵のときはあります。

だから、

いつか「飛ぶ」ためならば、
あたためる期間があってもいいんですね。

いつか「歩き出す」ためならば、
足踏みしていてもいいんですね。

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この記事へのコメント

2008年09月03日 12:57
回復の第一歩は 前向きな心から、、、が おいらの実感っす

今回のURLは まだ民間療法の域を越えてナイッすけんど こんな療法があるそうっす。。。
2008年09月03日 13:23
コメントさせて下さい。
なんだか・・・サッチャンは初めてお邪魔させていただいたときは、あまりに透明な世界感というか・・・なんともいえないこの空間にびっくりしてしまいました。。。「人をお世話する」と言う言葉の意味・・・
ここにきて、サッチャンの今までの捉え方が違っていたのかも・・・と、ふと考えさせられました。

まつこ
2008年09月03日 19:01
久しぶりにコメントさせていただきます。

濡れた羽じゃあ重くてうまく飛べないですもんね、濡れた羽を乾かす時間はあってもいいものだと思います。
飛べない時に背中押されても墜落死しちゃいますから。
ごとお
2008年09月03日 20:24
たけちゃんへ
情報提供いつもありがとうございます。
あっちゃん先生はいろんなことしてるんですね。
興味深いです。
ごとお
2008年09月03日 20:28
サッチャンへ
「透明な世界感」というかっこいいお褒めの言葉、
ほんとにありがとうございます。
感激です。*^^*
ごとお
2008年09月03日 20:35
まつこさんへ
「濡れた羽」というイメージもいいですね。
なんか、自分の書いたものが、
もっと深いもののように感じることができました。
ありがとうございました。*^^*

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