センパイはなぜ、ひとり静かに拳を握りしめていたのか?

「なんであんな状態の秋元さんをステージにあげるんだ・・・」

センパイはポツリと言った。


その言葉は、
隣にいた新人の私に話しかけたようでもあり、
独り言のようでもありました。


そのときの私はまだ、
センパイの言っている意味がわからず、
「はい」と「はあ」と「うなずくだけ」
の混じりあった返事をするしかありませんでした。


心の病気の方たちが入院する精神科病棟で行われた
文化祭でのことでした。

開会のあいさつに入院患者さんの代表として選ばれたのが、
秋元さんでした。


秋元さんは、明るくて元気で人なつっこく、
ムードを盛り上げるには最適の人でした。

「開会のあいさつには秋元さん」
誰もが納得する人選でした。

ではなぜセンパイは、秋元さんがステージにあがることを
納得しなかったのか?


私は、それから少し日にちがたってからその理由がわかりました。


文化祭の日の秋元さんは、
あまり調子がよくないときでした。

飲む薬を変更している最中だったとか。

ろれつが回らず、
いつもと比べると、ずいぶんヘラヘラとした感じで、
いわゆる酔っ払ったような状態でした。


しばらくあとに会った秋元さんは、
別人のようにシャキッとしていましたから、
新人の私にもようやく事態がわかってきました。


文化祭の日、
状態のよくない秋元さんがステージに立っていても、
ほとんどの人が違和感なく、あたたかく見守っていました。

それはそれで、悪いことではない。
あたたかい空気が流れていました。


でも、センパイだけは、
基準を病棟ではなく、
社会において文化祭を見ていたようです。

社会に出たとしたら、
ステージにあがるはずのない状態の人を、
ステージにあげても違和感がなくなってしまう感覚。


病院だから違和感はないが、
社会では不自然。


そんな感覚に対して、センパイは、
ひとり静かに拳を握りしめていたようです。




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●【支援セラピー】*^^*
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いつの間にか「井の中の蛙」
になっていることがあるはず。

そう思っていられるようにしたいです。

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ちなみに文化祭では、センパイと私は、
女装をして「おどるポンポコリン」を踊りました。
機嫌よく、笑顔でね(笑)。





この記事へのコメント

2010年11月06日 22:07
なるほどですね。。。
確かに病院の常識が社会の非常識ってことありますよね。
ニュートラルな感覚を持って、仕事をしていたいものですね☆☆
ごとお
2010年11月07日 06:14
杉長彬さんへ
「ニュートラルな感覚でいる」。これって、あたり前のことのようですが、意外と難しいことだと思います。常に意識していないといけないですね。

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